タイシンデアンシン

最近、「耐震等級はいくつですか?」「3ですか?」という住宅性能についての

質問を受けることが増えました。

 

「耐震等級」とネット検索するといろいろ出てきます。

「耐震等級3以外では建てるな」「耐震等級2で大丈夫というのは信じるな」など

過激なものも出てきます・・・・・

 

これでは「数値の高い方が丈夫みたいだから3がいい」となりますね。

そのとおりですが、記事を書いている人がどこまで理解して書いているのかが

とても気になります。

 

まず、建築基準法の耐震基準の概要は以下のとおりです。

①稀に発生する震度5強程度の中規模地震に対しては、損傷しない。(1次設計)

②極めて稀に発生する震度6強程度の大地震に対して、ある程度損傷を

許容するが倒壊しない。(2次設計)

建築基準法の第1条に、「この法律は、最低の基準を定めて・・・」とあるとおり、

損傷はするけど、倒壊せずに最低限人命は守ることを目的にしています。

 

上記①は許容応力度計算(1次設計)のことで、4号建築物(木造2階建て専用

住宅を含む)以外のすべての建築物が対象で、②は1次設計を行ったあとに進む計算で、

大規模、高層建築物などで検証する保有水平耐力計算(2次設計)のことです。

 

当たり前ですが、住宅は木造の他に鉄骨造、RC造、そして集合住宅、

多層階があるので、①の許容応力度計算がベースになります。

 

では、構造計算(許容応力度計算)が免除の木造2階建ての住宅は

どうなるのでしょう?  疑問になりますね。

 

2階建て木造住宅の構造安全性の検討方法は下記の3つです。

 

A・建築基準法の仕様規定

1次設計を行わなくても耐力壁の量の確保、耐力壁の配置バランス、

柱の引き抜きに対応する金物チェックを行います。

(現行は2000年6月から施行の改正新耐震基準)

 

B・品確法の住宅性能表示制度の耐震等級設計(耐震等級2、3、耐風強度3)

住宅性能表示制度とは、住宅にまつわる10の分野での性能を強化したものを

評価するもので、耐震等級はそのうちの1つ構造の安定に関する項目に出てきます。

 

耐震等級とは、Aの仕様規定にプラスして耐力壁の割増し、水平耐力の確保を

行ったものを指します。

耐震等級2は基準法の壁量に対して割増目安1.6~1.8倍(耐震等級1の1.25倍)

耐震等級3は基準法の壁量に対して割増目安2.0倍(耐震等級1の1.5倍)

 

C・許容応力度計算(1次設計)

計画建物の常時作用する荷重と風圧、積雪、地震のように短期に作用する

荷重をもとに、構造耐力上主要な部材に損傷が生じないことを目的にする計算です。

地震力の計算のせん断係数に1.25倍したものが耐震等級2で、

1.5倍したものが耐震等級3となります。

(地震地域係数が1.0以下の地域は1.0で行ったほうがよい)

 

一番多いのがAの仕様規定で、次いでB<Cとなります。

安全性確認の順位は、A<B<Cで、逆転します。(構造に係る費用もこの順)

 

2016年4月に発生した熊本地震の「熊本地震における建築物被害の

原因分析を行う委員会」の報告書を読むと、激震地の益城町(震度7が2回)において、

上記Aの改正新耐震基準のものは、「倒壊率が低く、倒壊・崩壊の防止に有効で

あったと認められている」とあり、被害状況は下の表を見ていただけると

よくわかります。(出典:熊本地震における~委員会報告書より)

その中でも、「住宅性能表示制度(品確法)に基づく耐震等級が3のものには

大きな損傷が見られず、大部分が無被害であった」と書かれていますので、

この部分がこれからは耐震等級3が重要だという印象を与えたのでしょう。

それでも、改正新耐震基準の前と比較すれば、現行のAの仕様規定も大幅に

性能が上がっているのが理解できます。

 

その後の調査で、築年数が若いのに倒壊している建物では、2階と1階の

耐力壁と柱の位置が合っている割合(直下率)が少ない、それと横方向の力を

下階に伝えるための2階床面や屋根桁面の剛性(水平構面)が足りないものが

多かったと判明しました。

 

品確法性能表示の耐震等級3の建物で大部分が無被害だったのは、品確法で

求めている床倍率による水平構面がきちんとできていたからでしょう。

 

さて、それでもBの品確法の耐震等級3は、Cの許容応力度計算の

耐震等級2より耐力的に同等かそれより劣るのです。

 

我々が日常業務で設計している住宅は、許容応力度計算での耐震等級2を最低とし、

品確法の住宅性能表示制度の耐震3と同等以上を基準としています。

 

なぜ許容応力度計算をすべての建物に行っているかというと、

プランニングの自由度と安全性を両立させるためです。

構造設計者と協働で進めて行くのですが、構造材は何にするか、

梁の大きさは・・・、これを成り立たせるためには・・・

などなどキャッチボールをしながらまとめていきます。

(構造骨格もデザインします)

 

それから、しっかりした建物も地盤の状態に大きく影響を受けるので、

地盤調査の結果による適切な地盤補強と基礎の設計も大事です。

いずれにしても、構造計画と計算は必須です。

 

ところで、Bの性能表示制度の認定を取得するには検査機関の審査と

それに関わる費用が発生します。

なので、認定は受けてないけど計画上は耐震等級2,3を「相当」と

いう書き方になります。

 

長々と書きましたが、構造設計の重要性と耐震等級の意味が

お分かりいただけたでしょうか?

 

設計/高橋

 

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